判例集掲載事例

ダイビング事故の訴訟

判例タイムズ1170号255ページ及び判例時報1892号43ページに掲載

当事務所所属弁護士の東野弁護士の趣味のひとつにダイビングがあります。ダイビングの知識・体験を生かし、他の事務所の弁護士と共同で、ダイビング事故の訴訟(大阪地方裁判所平成16年5月28日判決)を取り扱いました。

ダイビング事故は、訴訟遂行が難しい訴訟類型のひとつです。同じく事故に関する訴訟としては、交通事故による損害賠償請求がありますが、交通事故による損害賠償請求の場合には、事故証明や実況見分調書でおよその事実関係が把握できます。しかしながら、ダイビング事故の場合には、海の中での事故なので、事故の痕跡が全て流され、多くの場合客観的資料が存在しません。

そこで、関係者からの情報により事実関係を把握することになるのですが、ダイビングにより陸上の生活とは異なる水中の生活を経験していたことから、より正確に、より詳細に事実関係が把握できるのです。

事案の概要は、以下のとおりです。ダイビング資格を取得するためのダイビングスクールの参加者が、インストラクターに先導され、潜行して講習ポイントに向かう途中、インストラクターが講習場所の目印となるフロートを固定するために参加者から目を離したその際、参加者のうち1名がはぐれて、亡くなられたのです。

当事務所所属の東野弁護士と松原弁護士は、遺族の方から依頼を受けて、他の事務所の弁護士とともに、ダイビングスクールの経営会社やインストラクターを被告として平成13年に損害賠償訴訟を提起しました。被告らからは、「インストラクターは死亡した受講生から目を離していない。」「死亡した受講生は心臓発作(心室細動)を起こして死亡したものであり、インストラクターに責任はない」等の主張がされました。

この訴訟は、ダイビングスクールに参加していた方や医師に協力頂き、被告らの主張が退けられ、平成16年に被告らに約7721万円の支払を命じる勝訴判決を得ました。ダイビング事故は水中での事故ですので、水中の透明度・透視度、また、水中マスクを付けた状態での視界等について、陸上での生活と全く異なる視点から、証人に対し具体的に尋問できたことが勝訴につながりました。

ダイビング事故の訴訟について、興味を持たれた方は、判例タイムス1170号255ページ及び判例時報1892号43ページに、この事件の詳細が掲載されていますので、ご覧ください。

医療過誤

判例タイムズ1267号246ページに掲載

心臓手術後の術後管理不十分さが認定された訴訟

当事務所所属の東野弁護士・松原弁護士・中山弁護士が扱った医療過誤の事件が、判例タイムス1267号246ページに掲載されています。

子供やお孫さんから慕われていた女性(当時74才)が、心臓弁膜置換手術を受けた後に意識障害を起こし、その後死亡しました。手術後に医師から受けた説明に疑問を持たれたご遺族が、東野弁護士に相談に来られました。

医療過誤事件においては、遺族の方のお話を聞くだけではなく、診療録等を入手してその記載内容やデータで事実経過を確認すること、協力してくださる医師から詳しくお話を聞いておくことが必要です。そして、診療録を入手するには、改ざんを避けるために証拠保全手続を行うこともありますし、医師にお話を聞くにあたって最低限度の医療知識を習得しておくことも必要です。医療過誤事件の相談を受けるには、このような事前準備活動が必要なのです。

医療過誤とは、医療行為により死亡したとの結果のみによって導き出されるものではありません。現在の医療水準に鑑み、医師による懸命な医療行為がなされたにもかかわらず、不幸にも死亡という結末を迎えることもあるからです。そうだからこそ、安易に医療過誤と決めるつけるのではなく、上記のような事前準備をした上で、今後の方針を決めることになるのです。

このケースでは、心臓手術自体は成功したのですが、術後の血行動態の管理が不十分で、止血措置及び貧血を改善する措置を講ずることなく長時間経過したため、低酸素脳症(脳細胞への酸素の供給が絶たれ、脳細胞の障害が起こる状態)が発生し、遷延性意識障害(重度の意識障害)となったのです。診療録を入手し、協力医師とともに検討した結果、術後の血行動態の管理が不十分であったこと、その後の対処も不十分であったことが判明し、大阪地方裁判所へ訴訟提起しました。

訴訟では、原告代理人である東野弁護士・松原弁護士・中山弁護士から、上記経過による意識障害であり、被告病院の責任を認定するよう求めました。被告病院からは、意識障害の原因は心臓手術中に発生したものである(手術中に発生する脳梗塞を現在の医療水準では完全に防ぐことは困難です)ので、適切な処置によっても予防できなかった等の主張がなされました。

この訴訟は、証人尋問、鑑定等を経て、平成20年2月27日に、被告病院の責任を認める判決が出されました。遺族の熱意、丁寧にわかりやすく説明してくださった協力医師の存在が勝訴につながりました。

この訴訟について、興味を持たれた方は、判例タイムス1267号246ページに、この事件の詳細が掲載されていますので、ご覧ください。

職務発明訴訟

最高裁判所ホームページ掲載

会社に研究員として勤めていて、技術開発に貢献し(いわゆる職務発明)、それによって会社が利益を上げたのに、開発者には十分な報酬が支払われない場合があります。

当事務所では、このような場合に、会社に対して、職務発明の対価請求訴訟を提起した経験があります。

依頼者は、衣類に関する広範かつ多様な見識をお持ちで、下着の製造販売等を事業とする上場企業への業務支援を行う過程で、女性用下着を中心とするオーダーメイド衣類に関する発明を着想し、その会社に転職後従業員の立場で、その発明や関連発明をおひとりで完成させました。そして、当該発明を利用した商品がヒットし、会社の業績はV字回復を遂げました。

ところが、発明に対する十分な報酬を受けられないうちに、様々な理由から当該発明を利用した商品が次第に販売されなくなってしまい、依頼者は悲しみと疑問を抱えて、東野弁護士に相談に来られました。

そこで、当事務所所属の東野弁護士と中山弁護士は、知的財産に造詣の深い弁護士法人北浜法律事務所東京事務所所属の飯島弁護士、栗山弁護士、横井弁理士とチームを組んで、発明に対する正当な対価の支払いを求めて、訴訟を提起しました。

一審の大阪地方裁判所では、そもそも発明者は誰か、を始めとする9つもの争点をめぐり、膨大な主張書面及び証拠書類の遣り取りが繰り返され、多数人の尋問を経て一審判決が言い渡されました(判決言渡日・平成21年1月27日)。この判決では、発明者が依頼者のみであることが認められたものの、発明に対し正当な評価がなされているとは到底いえないものでした。

そこで、依頼者は控訴を提起し、知的財産高等裁判所でも、膨大な主張書面及び証拠書類の遣り取りを経て、同裁判所によりようやく、発明に対する相当な評価が認められ、判決が確定しました((判決言渡日・平成21年11月26日)。

この事件は、並行して特許無効審判、審決取消訴訟が提起されるなど、熾烈な争いを極めた事件であり、東野弁護士と中山弁護士にとって生涯忘れることのできない事件の一つとなりました。依頼者は、訴訟提起後まもなく会社を退職され、多大な精神的ご負担を忍んで弁護団チームとともに訴訟を勝ち切られ、現在は下着業界の第一線でご活躍されています。

この訴訟について、興味を持たれた方は、最高裁判所ホームページの「裁判例情報」の検索ページで、「全文」欄に「ブラジャー」「職務発明」と入力した上、検索ボタンをクリックしてくだされば、判決文を見ることができます。

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